クレーム応対研修をするとき、どのように進めれば良いのか悩むことはありませんか。

今回は、これまでご自分が経験した苦い経験を事例として活かす方法をご紹介いたします。
講師としてこれまでの仕事での失敗経験とそこからの教訓を伝えます。

クレーム応対に興味をもってもらうことができます。
また、誰でも失敗経験があり、そこから学びを得る大切さを知っていただくことを間接的に伝えられます。

1. クレーム事例をストーリーで語る

「もうあなたのサービスは受けたくない」私が客室乗務員だった頃、ファーストクラスのお客様から投げかけられた言葉です。

『この日、ホノルル便のファーストクラスは満席で、あるお客様はお連れのお母様と席が離れてしまい搭乗直後からご立腹でした。

飛行機が一番事故を起こしやすいのは、離陸時の3分間と着陸時の8分間、クリティカル・イレブン・ミニッツ「魔の11分」と言われており、離着陸時には安全確保のため、手荷物は全て収納する必要があります。

離陸間際になっても、通路に置いてあった大きめの手荷物が目に入ったため、「○○様、恐れ入ります、離陸の間はお手荷物を収納してもよろしいですか?」と声を掛けると、お客様は突然、烈火のごとく怒り始めました。「一方的な言い方だ」「必要なモノを出したら収納しようと思っていた」と…搭乗前からの不快な思い、私とのやり取りで感情が噴き出しました。

良かれと思い行ったサービスが、ことごとく裏目に出ました。
更に、お好みのシャンパンが在庫切れ、お勧めした和食がお口に合わずでした。
この後、様々なアプローチを試みましたが、お客様の心に届くことはありませんでした。

それどころか、あの言葉…「もうあなたのサービスは受けたくない」が投げかけられ、サービスついて至らない点のご指摘が長く続きました。

真剣に耳を傾け対応しましたが、これ以上は何をすることもできませんでした。
これまで経験したことのない切ない感情が沸き上がったと同時に、他のお客様へのサービスができないことへの申し訳なさでいっぱいになりました』

2. 事例をクレーム対応に繋げる

それまで機内でのクレームには、お客様の立場になり、『とことん話を聴く』対応をしてきました。
多くの方は納得され、逆に、お礼まで言っていただくことさえありました。

心を尽くして諦めずに関われば、言葉は通じなくても心は通じると信じていました。
このときも、同じ心構えで応対したのですが、全く通用しませんでした。

人の考え方、価値観は様々です。自分が良かれと思ったことでも相手にとって心地良いかどうかは分からないのです。
いくつかの場面で不快に思うことが重なり、堪忍袋の緒が切れたときにクレームは発生することが多いものです。
目の前の出来事だけではなく、過去の出来事にも目を向けると、お客様の心理が分かってきます。

 

3. クレーム対応の解決策を提示する

振り返ってみると、話を聞くばかりで、どんどんお客様の怒りを増幅させてしまったのだと思います。
『凛とした姿勢が信頼につながる』ことを学びました。

お客様との関りにおいては、「聴く」は重要ですが、「聴くだけ」ではダメなのです。

クレーム応対においては、相手の気持ちを厚く受け止めながら、最終的には主導的に相手を導く』『交渉力』が必要なのです。

 

4. 講師のクレーム事例を伝えるメリット

クレーム応対研修では、クレームの考え方や応対方法を伝えることは必要ですが、概念を理解するだけでは研修成果にはなりません。
受講者の現場で起きている事例を用いてロールプレインを行うとともに、講師が経験した事例を伝えます。

■イキイキとした事例により受講者の興味を引き出せる
実際にあったことやストーリーに人は興味をもつ

■ポイントを事例を通して伝えられる
今回はクレーム応対に必要な『誘導力』『交渉力』の必要性

■誰にでも失敗はあり、教訓を導く重要性を伝えられる
クレーム応対は心理的負担になることがあり、教訓化することで軽減できる

今回ご紹介した事例は、長時間の拘束と考えると、カスタマーハラスメントと言える事例にもなります。

最後までお読みいただきありがとうございます。
ご自身が客としての経験を活用することもできます。
失敗事例だけではなく、苦労したけれど上手くいった事例を伝えることも効果的です。