4月、新人研修の季節は、講師にとっても自身の「軸」を再確認する研鑽の場です。
今年は、2つの対極的な現場を経験しました。一つは、プロとして自身のスタイルを封じ、役割を演じ切ることに徹した現場。もう一つは、信頼するパートナーと共鳴し、受講生の人生に深く踏み込んだ現場。

この2つの経験から見えた、これから講師を目指す方に伝えたい「プロの景色」をお伝えします。

自分を消して「役割」に徹したことで見えた教育の軸

最初にご依頼いただいた現場で求められたのは、現代では珍しくなった「昭和の規律」を彷彿とさせる、威圧感を前面に押し出す指導でした。

私の本来のスタイルは、受講生の光を見つけ、承認からモチベーションを育む「種まき」の教育です。正直に言えば、頭ごなしに押さえつけるやり方は、私の哲学とは異なります。しかし、仕事として引き受けた以上、クライアントの要望を100%形にするのがプロの責任です。

研修中、私は刻々と届くクライアントからの指示に従い、笑顔を封印し、受講生の発言に拍手をせず、「厳格な講師」を演じ切りました。自分の良さは半分も出ていなかったかもしれません。
しかし、この経験は私に大きな宝物を与えてくれました。「自分はどんな教育を届けたいのか」という軸が、逆説的に、かつてないほど明確になったのです。そして、信頼関係があるからこそ、時には厳しく気を引き締めることが本当の愛情であるという真理も、改めて深く刻まれました。

70名の新人研修を成功させる「メイン講師とサブ講師」の共鳴

一方で、別の企業で担当した70名の新人研修は、私にとって最高に幸せな「共鳴」の時間となりました。

5日間に及ぶ長丁場を支えてくれたのは、私の主宰するファーストクラスマインド講師養成講座の2期生でした。卒業生の多くがすでにメイン講師として多忙を極める中、快くサブ講師を引き受けてくれた彼女は、まさに私の「目」となり「耳」となって伴走してくれました。

70名という大人数の研修では、壇上からは見えない「死角」が無数に存在します。彼女は絶えず会場を回り、一人ひとりの様子を緻密に報告してくれました。
「〇〇さんは一見静かですが、グループ内ですばらしいリーダーシップを発揮しています」
「〇〇さんは座り方が悪くだらしなく見えます」

こうした情報があったからこそ、私は適切なタイミングで承認の声をかけ、時に厳しくマインドを切り替える指導を行うことができました。一人の変化を見逃さず場を動かす。これはメインとサブが同じ志で共鳴していなければ、決して成し得ない仕事です。

「小さな疑問」を救い上げる連携の妙

特にサブ講師の存在価値を確信したのは、最終日の総復習ロールプレイングでした。
「報告・連絡・相談」や「名刺交換」の実践中、受講生の隣に寄り添うサブ講師のもとには、挙手をして全体で質問するほどではない、けれど切実な「小さな疑問」が次々と寄せられました。

「上司が自分のデスクに来たとき、すぐに立ち上がって受けるべきですか?」
「複数人での名刺交換、自分の立ち位置はどこが正解ですか?」

サブ講師は即座に私の元へ駆け寄り、「今、受講生の間でこんな質問が出ています」と確認に来てくれました。この連携により、私は「今、みんなが疑問に思っていること」として、その場で全体に向けて解説を加えることができたのです。

メイン講師一人では、こうした「小さなつまずき」をすべて拾い上げることは不可能です。サブ講師がいたことで、受講生たちは抱えていた小さな疑問を一つひとつ解消して配属先へと旅立てたことでしょう。

講師養成講座の卒業生たちが教えてくれたこと

今回、講師講座の卒業生たちにサブ講師の依頼をしました。しかし、ほとんどのメンバーがすでに「自分自身のメイン案件」でスケジュールが埋まっていました。
断られたことは、私にとって喜びでした。彼女たちがプロとして自立し、それぞれの現場で活躍している証だからです。

そして、今回引き受けてくれた2期生とは、もはや「師弟」ではなく、一組のプロとして対等に「共鳴」できました。

まとめ:変化する時代に求められる「人を育てる情熱」

講師の仕事は、壇上でスポットライトを浴びることだけではありません。
クライアントの期待に応えるために、時には自分のカラーを消して「嫌われ者」を演じてでも役割を全うする強さを持つこと。そして、一人では届かない領域を、信頼できるパートナーと共に埋めていく尊さを知ること。

時代と共に研修の形は変わります。厳しさを求められる昭和のスタイルも、寄り添いを求める令和のスタイルも、根底にあるのは「人を育てる」という情熱です。

講師歴25年の私も自分の軸を磨き続けながら、どんな現場でも柔軟に、かつ誠実に「演じ、そして響き合う」ことを大切にしています。その積み重ねの先に、受講生の人生に深く刻まれる最高の時間が待っています。

私の主宰する『ファーストクラスマインド講師養成メソッド』では、単なる話し方のスキルだけでなく、こうした現場での「あり方」や、心理学に基づいた「深い観察眼」をお伝えしています。

これから講師として歩み出す皆さま、そしてお一人おひとりの「最初の一歩」を、私は心から応援しています。

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山口みほ