講師として登壇するとき緊張しませんか?
緊張を無理に抑え込むのではなく、緊張を上手に活用し講師として堂々とした態度で話せる方法をお伝えします。
Contents
1. 研修冒頭で緊張しない3つの方法
研修の最初と最後は人の記憶に残りやすく、
成果をあげるためには重要な時間です。
初頭効果と親近効果といわれています。
(初頭効果はポーランドの心理学者
ソロモン・E・アッシュが1946年に、
親近効果はアメリカの心理学者
ノーマン・H・アンダーソンが1976年に提唱)
講師の「ありよう」や「ステイト」(心身の状態)は、
意図せずとも参加者に伝わります。
ですから、
講師は過度な緊張をプロとして
コントロールする必要があるのです。
そうは言っても緊張するものは抑えられないものです。
参加者に目を向けてみましょう。
研修内容や参加者の状態にもよりますが、
「今日は何をやらされるのだろう」
「恥をかきたくない」と
ドキドキして参加している人は
多いはずです。
過度の緊張は学びを阻害します。
参加者がリラックスし
知的好奇心をもち
学びを深めるためには、
参加者の緊張をほぐすことが
求められます。
参加者を巻き込みながら
自分自身の緊張も和らげられれば
一石二鳥です。
①どこを見るのか決める
一つ目の方法は、
「どこを見るのか決める」です。
「ウォーリーを探せ」ならぬ
「うなずき君を探せ」と言い換えると
分かりやすいでしょう。
参加者に見られると思うのではなく、
こちらから目配りをすることで
好意的に聞いているなと思える方は
探さなくても自然に見つかります。
組織や上司に強制され参加し、
否定的・批判的なマインドのまま
研修がスタートすることがあります。
そのような中でも、
何かを学びとろうと好意を示す方は
必ずいるものです。
不思議ですが必ず一人はいらっしゃいます。
うなずいたり笑顔で聴いてくれたりする方に
目を向けて話しましょう。
聞いてくれている様子が分かると
グッと落ち着いてきます。
②視線を一旦外す
二つ目の方法は、
「視線を一旦外す」です。
講師が参加者を見ないようにするのではなく、
相手に自然に視線を外してもらいます。
例えば、
「本日使う資料を確認します」や
「テキストに名前を記入しておきましょう」
などと言えば参加者の視線は机の上に移ります。
ほんの数十秒かもしれませんが、
大勢の視線から解放されてホッとできます。
視線という観点から、
「演台を活用する」のも
緊張を和らげる方法の一つです。
下半身が隠れていると、
参加者からの視線が集中するのを
避けることができます。
世界の著名人の講演を配信している
TEDに登場する人や
スティーブ・ジョブズなどが行う
プレゼンテーションでは、
演台はなく全身を見せています。
演台は聞き手との
物理的・心理的な壁に
なりうることもあります。
百戦錬磨の達人であれば
演台は使わない方が
一体感を演出するのに
効果的と言えるかもしれません。
講師としての
一歩を踏み出したばかりであれば、
緊張感を少しでも和らげ、
パフォーマンスを高めるために
上手に演台を活用するのは
戦略の一つです。
③否定的な内部対話をやめる
3つ目の方法は、
「否定的な内部対話をやめる」です。
自分自身に対する「内なる声」、
何気なく心の中でささやく独り言のような対話を
内部対話といいます。
「この表現良くなかったかも?」
「面白くないと思われたか」
「やっぱり自分はダメだ」
と話している途中で
自分を評価・批判する言葉が
頭の中を巡ることはありませんか。
研修冒頭でこのように自己批判してしまうと、
自ら緊張感を作り出すことになります。
さらに、この状態が長く続くと
パニック状態に陥ってしまいます。
もし、
批判的な言葉が聞こえてきたら、
それらの言葉の代わりに
「ワクワクしてきた」
「真剣に取り組んでいるな」
「良い研修になりそうだ」
と頭の中で言い換えてみましょう。
2. 緊張するとパフォーマンスは低下するのか
スポーツの世界では、
「緊張状態をどう対処するか」は
成果を上げるためには重要な要素です。
国立科学スポーツセンターのサイトでは、
緊張が高すぎると力みや焦り、
注意散漫につながり、
反対に緊張が弱過ぎると
ぼーっとしたり、
集中できなくなったりすると
述べています。
つまり、
程よい緊張は
高いパフォーマンスをあげるためには
必要であり、
集中するためには
なくてはならないといえます。
人前で話す際も同様に、
緊張は「悪」「排除すべき」ではなく、
パフォーマンスを高めるために
欠かせないのです。
「上手くやりたい」
「成果をあげたい」
という想いが強ければ強いほど
緊張感は高まります。
逆に考えると
それだけ真剣に
研修に向き合っているということです。
まずは、
そんな自分を認めることが大切です。
それができるだけでも緊張は緩んでいきます。
毎月1回行うような研修では、
過去の成功体験があり
口慣れてきて緊張はほとんどしません。
研修時の様々なトラブルは、
パンパンに緊張したときよりも
こうした慣れた研修の時の方が
高い確率で発生するように思います。
講師の気の緩みが引き起こすのかもしれません。
3. なぜ人前で緊張するのか?
緊張さえしなければ
もっと良いパフォーマンスができるのに
と思いませんか。
それなのにどうして緊張してしまうのでしょう。
私たちの身体には24時間常に働く
自律神経があり、
緊張状態や昼の活動時は
交感神経が高まります。
ゆったりしている時や夜になると
副交感神経が優位になります。
人前で話すというストレスが加わると
神経伝達物質のノルアドレナリンが分泌され、
呼吸が早くなったり、
血圧が上昇したり、
ドキドキしたり、
震えたりします。
このようにして緊張という状態になります。
Domaniというファッション雑誌が
30~45歳の日本全国の
有職既婚女性を対象に
行ったアンケートの
「あなたは人前で話すことが得意ですか?」
の問いに対して
人前で話すのが「得意な人」は7.4%
「まぁまぁ得意な人」は18.2%
「そんなに得意ではない人」は28.1%
「全く得意でない人」は46.2%
という結果です。
すなわち、
74.3%の人は人前で話すことを
「得意ではない」と感じています。
講師を職業にしようとする方は
人前で話すのは
比較的得意かもしれません。
しかし講師は、
ただ話すだけではなく
行動変容を促し
研修の目的を達成しなくてはなりませんので、
緊張感はより高まります。
「山口さん(筆者)は
講師歴が長いから緊張はしないですよね」
と聞かれることがあります。
「いえいえ、とても緊張します」
20年もこの仕事を続けていながら
「人前で話す仕事は向いていなのではないか」
と思うことさえあります。
私の場合、
緊張すると胸やお腹の辺りが苦しくなります。
特に新企画の研修初日は、
「本当にこの内容でご満足いただけるのか」
と今さら考えても仕方がないことや
「なんとか上手くやろう」などと
気負う気持ちが湧いてきたりします。
人前で話すことへの苦手意識
未知のことに対する不安感
実力以上に「上手くやろう」という気負い
このようなことが起因しています。
過度な緊張状態というのは、
ノルアドレナリンを分泌するという
身体の反応を、
自分自身の思考により
わざわざ増幅させている場合が
多いのです。
4. まとめ
適度な緊張は
講師として人前で話す際には必要です。
研修冒頭で緊張しない3つの方法は、
意識さえすれば直ぐに誰にでもできます。
講師のステイト(心身の状態)を整えて、
参加者の学びに貢献しましょう!
研修冒頭で緊張しない3つの方法
1.どこを見るのか決める
「うなずき君を探せ!」
2.視線を一旦外す
「本日使う資料を確認します」
3.否定的な内部対話をやめる
「良い研修になりそうだ」と言い換える
最後までお読みいただきありがとうございます。