単なる事務作業や備品の配布を行うのが「アシスタント」だとしたら、メイン講師と同じ視座に立ち、受講生の心の動きを共に導くのが「サブ講師」です。あなたは決してメイン講師の「控え」でも「お手伝い」でもありません。

4月の新人研修シーズンを控え、初めて「サブ講師」として現場に立つ予定の方も多いのではないでしょうか。

研修会社や現場によってその呼び方は「アシスタント」「運営スタッフ」「サブ講師」など様々です。しかし、私が考える「サブ講師」と「アシスタント」には、決定的な違いがあります。

今日は、140名規模の現場で実際に起きたエピソードから、サブ講師にしかできない「最高の仕事」について紐解きます。

講師の孤独を救った付箋のメモ

4月の新人研修。140名もの受講生がひしめく大きな会場でメイン講師が壇上に立つとき、講師の視界には全体の様子は見えるものの、後方のやり取りは見えないことがあります。

最後方のグループで誰が下を向いたか。どの受講生が、誰にも気づかれない場所で、斬新な視点での発言をしたか。壇上からでは物理的に届かないその「死角」をカバーすることこそが、サブ講師の真の腕の見せ所です。

かつて、私の講座の0期生がサブ講師として入ってくれたときのことです。
その日の研修は140名の新入社員という大所帯。講師にとって、後方の様子が見えにくいというのは、霧の中を歩くような言い知れぬ不安が伴うものです。

そんな私の手元に、彼女は研修中、何度もそっと付箋を届けてくれました。最終的に手元に残ったのは5〜6枚の付箋。そこには、驚くほど緻密な「現場の真実」が記されていました。

「後方左のグループ、議論が非常に深まっています」
「〇〇さんの〇〇という発言、新人とは思えないほど鋭い視点でした」

そのメモのおかげで、私は壇上から「後ろの〇〇さん、先ほど的を射たな発言をされていましたね」と承認の声をかけることができました。会場の後方の受講者の方々は、「自分は見守られている」という安心感をもてたことと思います。

彼女が自発的にしていたのは、メイン講師の「目」となり、受講生の「価値」を翻訳して届ける、高度なプロの仕事でした。

メイン講師を感動させる「付箋に書くべき3つのポイント」

もしあなたがサブ講師として付箋を渡すなら、メイン講師が「今、この情報が欲しかった!」と唸る以下の3点を意識してみてください。

1.「個」の承認:名前と具体的な発言

「後ろの方が盛り上がっています」ではなく「後方右、Aさんの『お客様の期待を超えたい』という発言が秀逸です」と書く。これによりメイン講師は、受講生一人ひとりを輝かせ、会場全体の“参加意欲”を高めることができます。

2.「場」の軌道修正:方向性のズレの報告

一見盛り上がっていても、実は雑談になっていたり、ワークの方向性がズレていたりすることがあります。
「グループB、目的を〇〇と勘違いしているようです」というメモがあれば、講師は全体へ向けてさりげなくリマインド(軌道修正)を入れ、研修の質を担保できます。

3. 会場全体の「温度感とエネルギー状態」

壇上で熱弁を振るう講師は、声を出し動いている分、座っている受講生よりも常に体感温度が高くなっています。
講師が「心地よい熱気」を感じていても、客席では冷えや疲れで集中力が途切れていることも。

「後方の集中力が少し切れてきているようです。次のワーク前に一度ストレッチを挟みますか?」といった会場の「温度差」を埋めるメモは、最高の進行管理になります。

完璧な講師より、良き「翻訳者」であれ

サブ講師は、決してメイン講師の「控え」ではありません。
むしろ、メイン講師が壇上からでは届かない「個」の領域にまで手を伸ばし、受講生の小さな声を拾い上げ、議論を正しい方向へ導くプロフェッショナルです。

4月の新人研修。もしあなたが不安なら、「立派に教えよう」とするのを一度手放してみてください。
受講生一人ひとりを丁寧に観察し、彼らが今何を求めているのかを感じ取る。そして、その様子を付箋に込めて、メイン講師に届けてみてください。

その一枚一枚の付箋が、講師の孤独を救い、受講生の人生を変える「魔法のメッセージ」になるのです。

おわりに

私の主宰する『ファーストクラスマインド講師養成メソッド』では、単なる話し方のスキルだけでなく、こうした現場での「あり方」や、心理学に基づいた「深い観察眼」をお伝えしています。

これから講師として歩み出す皆さま、そしてお一人おひとりの「最初の一歩」を、私は心から応援しています。

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山口みほ